※夏苅郁子医師の講演の紹介が載っています。

「向かうべきところ」 (ヨハネ5:1~9)

「起き上がりなさい。床を担いで歩きなさい」。(ヨハネ5:8)

起き上がりなさい、床を担いで歩きなさい。立て!と言われて歩き出した38年間寝たきりの病気だったこの人はどこへ行くのでしょうか。それも臭くなった自分の床を担いで。

先週の礼拝後、扇町教会で精神科医夏苅郁子さんのお話が、「心なごむ会(旧 心病む友と共にの会)」の主催でありました。

漫画家中村ユキ「私の母はビョーキです」に触発されて夏苅郁子さんは 「人は人を浴びて人になる」を出版しました。8年前に自分が統合失調症の母親に育てられ、自殺未遂をし、精神病院に入院し、頑張って医師になったことをカミングアウトしました。この本は韓国でも出版され、中村ユキさんはこの本を読むためハングルの勉強を始めたそうです。

以下のように語られました。「200回以上の講演を日本全国でして、聴いてもらい質問を受けて•親への恨みが変わった・全国に仲間ができた・精神科以外に、知り合いができた・精神科医に、家族の気持ちを伝えることができた⇒精神科医は、想像以上に家族の気持ちが分かっていない •皆さんから「全国を駆け回って大丈夫?」と言われるが・・私の活動は、親との和解だけではなく「精神医学との和解」でもある⇒精神科医を続けていくうえで、何としても必要なこと•「マイナスだと思ってきた自分の過去」を、全国各地の当事者・家族が「価値ある事実」に格上げしてくれた

•そんな患者さんや家族が愛おしくなり、診察室でも少しずつ自分の感情を出し、患者さんとの距離を縮めた 私が距離を縮めると・・患者さんや家族も本音を言ってくれるようになりその中に必要な情報があり、症状を正確に把握できたので、患者さんが良くなっていった ⇒目が覚めるような体験だった・今の私の母への想いを一言で言うと「尊敬」です。

「自分は障害者だから・・」とは、母は一度も言ったことはなかった・「生か死か二つに一つ隙間風」塚本タツ・「その人が幸せか不幸かは、最後にその人が決めるもの」「たとえ家族であっても、本人以外の人が決めつけるものではないんだ」発病による家族との断絶の中で母を支えたのは・・・文学への情熱と信仰(カトリック)・職業意識(看護師)

・患者さんは「再発しない」ためだけに生きているのではない!母から学びました・私が母と自身のことを公表するまで30年を要しました⇒世間の「精神疾患への偏見」が大きく影響しています・母の発病から半世紀以上が経ったが、日本の精神医療を取り巻く環境は良くなったのでしょうか?「精神科にかかって、良かった」と思ってもらえるように・・・「精神科にかかったことで、さらに不幸になることがありませんように」精神科全体の質の底上げのために医師の世界の内側から(ゲリラ的に)言うべきことを、きちんと訴えて行きます」といわれました。

癒された者がどこへ向かうのかの、一つの例です。今も苦しいことがあって、自分には主治医が居ますとも言われました。正直に生きておられる姿勢は爽やかです。私たちも「起き上がる」者として自分らしく歩みましょう。